リピーターを増やす仕掛けの難しさ――「新規開店」の賞味期限【会社経営・地域再生】

 

 

24日,丸井今井旭川店の跡に,Feeeal旭川店がオープンしました。現在はファーストオープンの段階で,ジュンク堂書店と東急ハンズなどが営業を開始したようです。今ふうの大型店舗に縁のない当地住民からすると,大変羨ましい限りです。

 

この手の「新規開店」を前居住地の千葉ニュータウンでよく経験した筆者としては,開店直後の物珍しさで集客できるのは一時期だけであり,客足を維持することはなかなか難しいことを,よく知っています。

 

新規に大型ショッピングモールがオープンすると,まあ,どれも似通ったものなのですが,オープン後一時期,周辺道路が渋滞して,日常生活に支障を来すほどの集客能力があります。しかし,別のモールがオープンすると,お客さんの流れは,そちらに行ってしまって,古いモールは閑古鳥が鳴いている,そして,いつの間にか,お店が1軒また1軒と撤退し,より客足が遠のく,という悪循環が繰り返される,というのがお決まりのパターンでした。

 

商品のライフサイクルがどんどん短くなっているのが最近の傾向ですが,一つの商業施設の陳腐化のスピードもこれと同様に進んでいるイメージがあります。

 

ところで,同じ千葉ニュータウンに,ジョイフル本田,さんという,大規模ホームセンターがあり,こちらだけは,常に,巨大な集客力を維持しています。筆者も,たまに里帰りしますと,空港から直行してしまうくらいの勢いなのですが,陳腐化どころか,魅力満載です。

 

この違いは何だろうか,と考えることがあります。

 

ジョイフルは,もちろん,工具の玉手箱,資材館だけではなく,日用品を扱う生活館,食品のディスカウント販売している食品館,さらに,ガーデニング・建築用資材,シネコン,スポーツジム,と,明確なコンセプトの下で,郊外型生活を楽しむための様々なコンテンツを並べています。つまり,筆者の見るところ,こうした集客力のある店舗は,「商品」を売っているだけではなく,その主たるターゲットとする顧客に合った「ライフスタイル」を提供している,ようです。

 

千葉ニュータウンにお住まいのお父さん達は,棚の一つも自分で作れないとバカにされるのですが,それをクリアーすれば,次は,ウッドデッキを作りませんか,そうしたら物置でも,さらには,家(ログハウス)も建てられますよ,というように,次々と,「その次」のメニュー――郊外型ライフスタイルの中での理想的なお父さん像を具現するもの――が用意されており,そして,そのメニューを実現する品揃えがそこにある,そうすれば,知らず知らずのうちに,毎週末にジョイフルに足を運ぶ,そういう仕掛けが随所になされています。

 

道内では,個々の商品(特産品)・サービス(観光資源?)を売るためのマーケティングだけではなく,繰り返し買わせよう,足を運ばせようという仕組みを意図的に仕掛けているケースは少ないのではないか,と感じます。明確に,地方都市の家族,子育て世代をターゲットにしたマーケティングを展開しているイオンに対抗して,どの程度明確なマーケティングコンセプトを打ち出せるか,Feeealの今後に期待したいところです。

 

不採算事業整理の落とし穴――濫用的会社分割【会社法務・企業法務】

 

 

最近は,地方でも経営不振に陥った企業が採算部門の事業(コア事業)を切り出して,不採算部門(ノンコア事業)を整理できないかというご相談を受けることがあります。

 

いわゆる会社分割ですが,これは,簡単に言えば,会社(分割会社)が事業の一部を切り離し、新会社として独立させたり、他の会社に承継させたりする手法です。会社分割の際,発行される新設会社または承継会社の株式が誰に割り当てられるかで,人的分割(分割会社の株主に割り当てられるケース)と物的分割(分割会社に割り当てられるケース)の2つのパターンがあります。

 

問題となるのは,当該企業が債務超過となっているケースです。もし,分割契約上,新設会社(承継会社)が分割会社の債務を免れる,ことになっている場合,分割会社は当該承継された債務は免れるものの,残された不採算ノンコア事業だけでは会社として立ちゆかないでしょうから,早晩破綻することは目に見えております。

 

分割会社(不採算ノンコア事業会社)の債権者としてはたまったものではない,と言うことになりますが,会社法上,会社分割における債権者保護手続において守られるのは,分割会社に残される債務の債権者ではなく,新設会社(承継会社)に承継される債務の債権者です(会社法810条1項)。

 

そこで,ノンコア事業会社に残された債権者は,そういう会社分割を「詐害行為」として取り消してやろうか,と考えるわけですが,この,詐害行為,とは,債務者(この場合は分割会社)が債権者(ノンコア事業会社に残された債権者)を害することを認識しつつ自己の財産を売買するなどして積極的に減少させた場合に、債権者が裁判上その法律行為を取り消して財産を返還させ、責任財産を保全するための制度ということになります。

 

会社分割が詐害行為として取り消しできるのか,については,そもそも組織的行為が詐害行為取り消しの対象とならない云々の形式論はともかくとして,福岡地判平21.11.27は,会社分割による資産の移転を詐害行為として否認し,当該資産相当額の償還を認めた破産裁判所の決定を是認する判断を示しています。また,東京地判平22.5.27は,原告の債権額の限度で会社分割を詐害行為として取消し,同額の価額賠償を認めました。

 

これらケースに関する詳細は省きますが,経営不振に陥っている企業を会社分割の手法で整理再編するにあたっては,こうした分割会社(ノンコア事業会社)の債権者への手当を怠るとスキーム自体が立ちゆかない危険があることになります。

 

分割会社に新設会社(承継会社)の株式を割り当てる物的分割のケースでは,分割会社は資産としての分割事業を失っても,それに見合った株式の割り当てを受けているのであるから,詐害性はないとする議論(=債権者を害することにはならない)もあり,実際,相当の対価を得てなされた財産処分行為の詐害性を原則として否定した平成16年の改正破産法との整合性を疑問視する見解もあります(内田貴『民法Ⅲ〔第三版〕』298頁,313頁(東京大学出版会,2005年)や,法制審議会民法(債権関係)部会資料7-2,50頁以下では,詐害行為取消しの要件についても否認の規律に準じて考える方向での議論がなされています。)。

 

なお,経営不振の第三セクターの事業再編については,さらに事情は複雑です。すなわち,当該第三セクターの金融機関向け債務に地方自治体の損失補償が付されているようなケースでは,ノンコア事業会社に補償対象債務を残し,みすみす住民負担を増やすこととなる分割契約を株主として承認できるかという問題と,逆に,コア事業の方に承継させるとすれば,ノンコア事業会社の債権者からは,民間の債権者を犠牲に役所が債権回収にはしったとの非難を浴びるリスクとの狭間の中で,慎重な判断,対応が求められることになります。

 

会社経営の落とし穴――連帯保証【金融庁監督指針】

 

稚内だから,なのでしょうか,会社の実態はもう存在しないのに,なぜか,会社の債務を連帯保証した保証人のところに請求が行く,という事例があります。もちろん,会社の実態が個人営業で,オーナー関係者が連帯保証するケースであれば,致し方ないのでしょうが,問題は,無理無理頼まれて,知人の会社の債務を連帯保証した,とか,会社の負債を名目上の役員とか社員が連帯保証する,とかいう場合です。

もちろん,

 

知り合いに頼まれたからと言って,安易に保証人なんかになるものではない

 

と説教したところで,後の祭り,相談者を前に,だから仕方がない,と冷たく言い放つのも気の毒ではあるのですが,本日の新聞報道によれば,金融機関が中小企業に融資を実行するにあたり,実質経営無関与の家族,知人による連帯保証を原則禁止する方向で7月にも監督指針を改正する方針を固めたそうです。

 

改正の内容は不明ですが,将来の融資については,金融機関側で,そのような保証人を求めることはしないようになるでしょう。ただ,過去の債務については,対象となるわけではないようですが,同新聞報道によりますと,そういった連帯保証人に対して請求をしないように,金融機関に促す措置をとるようです。

 

今回の措置の対象となるのは,経営に関与していない家族,親族,先代経営者,仕事上の関係者,などだそうですので,「友人の会社の」というような場合は,残念ながら,対象にはならないようです。他方,たとえば,夫の経営する会社の負債を妻が連帯保証する,というようなケースでは,これに当たりそうですが,多くの場合,妻も会社役員として(名目だけであっても)名を連ねている場合が多く,そうすると,「経営に関与していない」かどうかは,微妙になってくるかもしれません。

 

いずれにしろ,金融機関サイドでは,そうしたかたちで連帯保証を求めることは監督指針上問題,ということになりますので,債務者(会社経営者)の自己申告によるのか,または自身で経営関与,仕事上の関係,等々の実態を調査した上で,判断するのか,悩ましい問題を抱えることとなりそうです。

会社経営の落とし穴――優越的地位の濫用【独占禁止法】

 

 

昨年の11月30日に,公正取引委員会より,「優越的地位の濫用に関する独占禁止法の考え方」が公表されました。道内はもとより,全国的に,中小零細企業が不当なしわ寄せを強いられるケースがあるほか,企業数が少なく取引関係が濃密な地方都市においては,逆に,取引先に対して,「優越的地位」に立ってしまっている場合もないわけではなく,ある日突然,独禁法違反の指摘を受けて慌てることのないように,ご注意いただく必要があります。

 

そもそも,「優越的地位の濫用」とは何か,ということですが,独占禁止法2条9項5号によれば,「自己の取引上の地位が相手方に優越していること」を利用して、正常な商慣習に照らして不当に、購入強制,経済上の利益の提供強制,受領拒絶,返品,支払遅延,減額,その他取引の相手方に不利益となるように取引の条件を設定すること等が要件となっています。

 

独禁法を考える上で,常に悩ましいのは,「自己の取引上の地位が相手に優越していること」とか,「正常な商慣習に照らして不当に」,とかいう抽象的な文言ですが,このうち,「優越した地位」については,相手方にとって当該事業者との取引の継続が困難になると事業経営上大きな支障を来すため,著しく不利益な要請等であっても受け入れざるを得ない状況をいい,本件ガイドラインでは,①取引依存度,②市場における地位,③取引先変更の可能性,④その他取引することの必要性を示す具体的事実の4項目が挙げられています。

 

地方都市では,全国的に見れば,たいしたことがない企業でも,その地域の取引先にとっては,死命を制する力をもっていて,取引先はいやがおうでも従わざるを得ない,という場合があります。たとえば,大規模なホテル,旅館が建ち並ぶ日光鬼怒川や伊豆熱海,などと違い,マイナーな観光地では,大型宿泊施設は一つ,後は民宿程度のホテルがいくつか,というような場所は珍しくないのですが,地元の食材や飲料,リネン,燃料などの納入業者さん,ハウスキーピング等のサービス業者さん,土産物屋さんなどにしてみれば,取引先変更の可能性は皆無に等しく,どうしても当該大型施設の言いなり,無理難題にも従わざるを得ない,という現実があります。

 

もちろん,単に納入代金の減額を要請するだけで,独禁法違反になるわけではなく,あくまで「正常な商慣習に照らして不当」なもの,すなわち,公正な競争秩序の維持・促進の観点から是認できないものが法令違反になるわけですが,例えば,①多数の取引の相手方に対して組織的に不利益を与える場合,②特定の取引の相手方に対してしか不利益を与えていないときであっても,その不利益の程度が強い,又は,その行為を放置すれば他に波及するおそれがある場合,は,公正競争阻害性を認めうる,としており,関係者同士の感情的なもつれから,特定業者を狙い撃ちにした行為(村八分,的なもの。地方では,これまたよくある話です。),などは,不利益の程度が強い,として,独禁法違反の問題となる可能性は高いのではないかと考えます。

 

昨年の1月1日に施行された改正独占禁止法により,新たに課徴金制度が導入されることとなりました。課徴金制度の導入により,以上の行為に該当するものであることが認定されれば,当該行為の相手方との間における売上額・購入額の1%が課徴金として課せられることになりますので(20条の6),経営上は,大変なリスクとなり注意が必要です。

旭川“北京”構想

 

 

旭川を北京(Beijing)にするのか!?

 

まぎらわしいのですが、そういうわけではなく、「北京(ほっきょう)構想」のことです。

 

『旭川周辺に離宮を作って北海道開拓を進めようとの計画があった。明治十年代のことだが、西京(京都)、南京(奈良)、そして東京がある。あとないのは北京だけだというのがその理由であった。もしこの地に離宮ができたならば、明治天皇や皇后は夏には涼を求めてこの地に滞在することになったろうし、あるいはのちの第七師団のなかには皇族の守護にあたる近衛連隊もできたかもしれない。そうなれば、北海道は札幌を中心に開拓が進むのではなく、旭川が北海道の中心になるはずだった。加えて、北海道はロシアと対峙する最前線基地として、政治的にも軍事的にも軋轢が生じたかもしれない。いや日本全体の近代史は、様相を異にしたとも考えられる。』(保坂正康「最強師団の宿命」毎日新聞社、2008年、45頁)

 

今の神楽岡あたりが離宮予定地であった、とのことですが、当時の札幌・小樽の経済界からの猛反発、開拓使内部の薩長閥と土佐閥との確執、など、天皇や、非藩閥系の人々にとっての新天地北海道のもつ当時の政治的意味合いを考えると、なかなか興味深い歴史の一コマではあります。

 

ただ、この「旭川“北京”構想」が挫折すると、かたちは変わり(天皇ではなく、その権威を体現する)、札幌にあった第七師団の司令部が旭川に移転されることとなり、その後、旭川は「軍都」として発展したことはご案内のとおりです。

 

突然話は飛びますが、筆者は、この「北京」「軍都」が、北海道の地域再生モデルの有力な選択肢の一つになると思っています。もちろん、いまさら「離宮」、「師団」というわけではなく、もちろん、それも一興ですが、地域ブランドのユニークなコンセプトを全面に打ち出し、人を呼び込む「仕掛け」を盛り込んで世の(政府の、市場の)アテンションを高め(維持し)、人とカネの流れを作ろう、という、言ってみれば、マーケティングの分野では、ごくごく基本的な発想です。

 

3.11後の北海道の立ち位置は微妙です。東北地方の震災復興の陰で、否応なしに、世の関心は東北地方(と、もちろん、被災地としての関東、北海道)に向かいます。いやいや、北海道はまだまだインフラ整備が重要だ、と言っても、通常のニーズは、二の次、三の次、になることは避けられません。であれば、常に、北海道の存在感を発信し続けていかなければ、忘れ去られてしまうとも限らず、そうならないように、自身の持ち札(リソース)を総動員して、創意工夫を凝らし、中央(政府)や市場のアテンションを維持しうるような「仕掛け」を繰り出して行かねばならず、再生の鍵は、この「仕掛け」の出来具合にあると言ってもよいのではないかと思っています。