新千歳空港で外国人旅行客が暴れたそうですが,「雪」が相手では仕方がないとあきらめていただくしかありません。
しかし,「雪」,と言っても,「この時期にしては」という枕詞が付きますと,ニュアンスは違います。「この時期」の大雪に関しては,すでに10日ころからもそうなっており,筆者も出張でひどい目にあいましたが,23日の暴風雪予報については,もともと予報が出ていたわけですから,除排雪の体制を前倒しするくらいのことはできたでしょう。
これでは「観光立国」日本のイメージが悪くなる,ということで国交省が調査をするそうですが,単純に,
何でもかんでも札幌(千歳)に集めようとするから,こういうことになるんですよ。
ただ,そうだとしても,千歳が使えないなら,周辺の旭川,帯広,を使えばよいわけだし,実際,千歳が使えないから,ということで,新幹線経由で来たり,帰ったりする人で,新函館北斗は終日混雑,だったそうですから,普通に考えれば,そういうことです。
ところが,近隣の空港と結ぶべきJRも,運休。それも,札幌駅構内の除雪が間に合わないから全線運休というのは,全く不合理で,帯広に出るのであれば,南千歳あたりから折り返し運転(あるいは道東道でバス)するとか,旭川に行くにしても,石勝線,室蘭本線は岩見沢までつながるわけだし,鉄路が無理なら,道路で岩見沢までピストン輸送すれば,特急が岩見沢~旭川間を折り返し運転してもらえれば何パーセントかの乗客は,空港の床に寝かされることもなかったでしょう。
実際,道内の交通機関が,全体として,そういう柔軟な運転ができるようなシステムになっていません。人もシステムも全部,いったん,札幌駅に入らないと気が済まなかったり,他の事業者と連携して非常事態に対処するという発想がない硬直的で融通の利かないかたちになってしまっているから,いざ,札幌駅,新千歳空港が使えないとなると,すべてがマヒしてしまうことになります。
首都圏の交通機関は,想定外の非常事態に備え,振替輸送の実施のために事業者があらかじめ協定を結んでいるそうですが,なぜか,道内の事業者には,交通システム全体がマヒしてしまうのを防ぐために,事業者が融通しあうというそういった発想がありません。一本がだめでも,代替経路を使って全部がマヒするのを防ぐ,というフェイルセーフの発想が,航空会社(機体の設計にはフェイルセーフは当たり前なのに,なぜか運航部門にはないのでしょうか。)にもJRやバス事業者にもなく,かつ,そうした連携を可能にするコミュニケーションもない,ことが諸悪の根源であり,外国からの信頼を失う原因です。
「安全・安心」だけではなく,「安定・確実・信頼」も,公共交通機関・システムとしては不可欠の要素です。本来,せっかくの旅行で何日も空港がクローズになって床に寝かせられて,臨時便も来ない,振替輸送もない,で,「欠航です。あしからず。」だったら,普通は,怒りますよ(まあ,暴れるというのは,お国柄なんでしょうか。)。事業者が,そのリスク管理と経費削減のために,何とかの一つ覚えみたいに「安全・安心」を唱えているのを真に受けて,ここまで不便で,信頼性を欠く交通機関の利用を強要されながら,一言の文句もなく「お天気のことですから」と納得している日本人は,人が良いのか,適当にあしらわれているのか,どちらでしょうか。