以前,というか,今となっては遠い昔,日本経済も企業も今よりもっと元気だった頃のお話で, 発展途上の某国でのこと,毎朝,汽車に乗るために,地平線の彼方から荷物を頭に載せて老人が駅にやってくる。待合室で,同じく汽車に乗るためにやってきた乗客らと談笑しながら,結局,その日は汽車は来ず,にこやかに,「今日も来ませんでしたね。」と言って,夕方には,また地平線の彼方に去って行く。 当然,当時,それに比べ日本の鉄道は・・・・という話が続いたわけですが,これ,地平線の彼方からやってくるほど国土が広大ではないことを除けば,今の北海道の鉄道事情とあまり変わりありません。
宗谷線では特急停車駅ですら,時間帯によっては無人になる(正確には,有人の時間帯がある)ので,クレームをつける駅員すらおらず,「今日は来ませんでした」は,決して発展途上国の某国のお話ではなくなってしまいました。
全列車をストップしてレールのゆがみを直せ,と,さすがに鶴の一声は強烈ですが,途中駅の抜海で運転打ち切りになってタクシーで終点の稚内まで代行輸送,まではいいとして,次の日の朝,まだ作業が終わってませんので折り返しの稚内・南稚内間は部分運休,運休区間は代行輸送でしかも3時間遅れ,では,たぶん,朝のスーパー宗谷に乗る予定であった人は大変だったでしょう。
代替手段である(なんとか,午後イチに札幌に着ける)都市間バスは6時30分に行ってしまったあとで,次は,8時30分発ですが,到着は,午後の2時30分ころです。それでも何とか午後早いうちに着けますから,ここでバスに「路線変更」するか,そのまま運転再開を待つか,利用者が「自己責任」で判断するしかありません。その8時30分の都市間バスを逃すと,あとは夕方に着くバスしかありませんが,(汽車が動くと思って7時前後に駅に来た人にとっては)あと1時間以内に運転再開される保証はどこにもありませんし,地元民ならともかく,観光客など,その8時30分のバスの存在すら,知らないかも知れません。
たぶん,どう考えてもレールがゆがんだまま列車を走らせるのは論外,誰が考えても止めるのが正解ですが,正解が利用者に優しい選択肢とは限らず,利用者に優しい事業経営であるためには,お客さんに迷惑をかけないことが一番,やむを得ない場合でも,お客さんが困って立ち往生しないように,ケアーしあげないと,全く気の毒です。
いわんや,列車と運転,保線部署と,駅その他の顧客対応の部署との間の連絡不足により,「運転再開の目処はたっておりません。他の交通機関をご利用下さい。」を連呼しているだけでは,利用者にとっては,発展途上の某国とあまり変わりありません。
まあ,「『他の交通機関』に行くか,このまま待つか,どっちにしようか考えるところもあり,運転再開の目処だけでも教えてほしい。」と聞いたら,「わかりませんよ。さっきからそうアナウンスしているでしょ。」と駅員に逆ギレされた筆者の経験からしても,まず無理ですかね。