東京スター銀行が台湾の銀行にまたまた売却されるそうです。邦銀の不良債権問題に端を発して,小泉政権下でおおはやりした投資ファンドによる邦銀の買収騒動はなんだったのか,それで,邦銀の財務体質がどうなったのか,なにやら釈然としないまま,投資ファンド的には,収益が上がらなければ,放り出して終わり(撤退),です。人頼みでは何も起きないし,こちらの思惑通りになんかならない,一つの例ではありますが,著名な投資ファンドすら手を焼く,それほど邦銀(一部のメガバンクは別でしょうけども。)を含め,我が国の経済体質が病んでいる,ということでしょうか。
不良債権問題の中でも,地域金融機関の不良債権処理と地方企業の不振の問題は,中小企業金融円滑化法のおかげで,無事先送り,というか,忘れられてきました。「『3年たっても体質改善できない企業の救済を続ければ,行政の信任を損なう』」(日経)との厳しいご指摘,ごもっともですが,同法にしたがって返済猶予を受けた企業は全国の中小企業の1割弱にあたる30-40万社,経営が改善せず,返済猶予を繰り返す「『不良債権予備軍』は5-6万」(日経)だそうですから,そうした「不良債権予備軍」がセーフティーネットなしで放り出されれば,ただでさえ疲弊している地方経済に与えるショックは「メガ」です。
東京目線では政策パッケージとしては有効かもと言われる都道府県の中小企業再生支援協議会も,現場の実態は,メインバンクが責任をとって再生のお膳立てができた案件を持ってきてください,というだけで,そもそも地方金融機関が独力で再生のお膳立てができない地方の「不良債権予備軍」は「門前払い」ですから,全くあてになりません。
とはいえ,「天は自らを助る者を助く」,金融機関や行政,なんとか協議会も,しょせんは人頼みで,あてにならないことはこれまでの経験から実証済みです。ところが,「どうにもならない」はずの深刻な問題も,結局,「人による」と思わざるを得ない,誠に不思議な話があります。
道内の農作物や食料品のサハリン・極東ロシア方面への輸出はこれまでも言われてきたし,現に行われている経済活動です。ところが,何か次の一手を,と言うと,必ずと言っていいくらい,「保冷設備が」とか,「通関に時間が」とか,「運送コストが」とか,至極もっともらしい理由づけが,「したがって無理です」という結論とともにワンパターンに使われてきました。
しかし,サハリンの某スーパーが,設備のない保冷コンテナを自前で用意して解決,時間がかかるといわれた通関手続きも自社社員が行ったらたった一日でOK,便利な小樽からの不定期航路を使って,現地店舗で北海道の農産品を並べたところ,価格は割高なものの大好評,という趣旨の最近の北海道新聞の記事を拝見しますと,「どうにもならない」はずの難題が,ロシア人の若手社員のやる気で「どうにかなってしまう」- 魔法使いでない限り - のであれば,「どうにもならない」のは,人がそうしている,まさに「ならぬは人のなさぬなりけり」と思わざるを得ません。
地域再生も,金融機関や行政の「やる気」や一片の法律に「お任せ」では「どうにもならない」というべきでしょう。
通信衛星の生みの親,John Pierce博士ですが,人工衛星で反射された電波が宇宙空間を伝搬する強度に関する絶望的な計算結果に,曰く,「なんという計算結果だ。おもしろくなってきたぞ。」。問題がわかったら,それを解決すればいい,さすがは,天才です。ただ,天才だから困難を克服できたのか,問題は解決すべきもので,できないことの理由にしないことが天才との評価につながったのかは,わかりません。