英語とは誠に無粋な言語で,こう翻訳してしまうと,趣も何もあったものではないのですが,フランス語の原文は,Qu’ils mangent de la brioche. (ブリオッシュを食べさせたら?)になるそうです。
有名な,「パンがないなら...」は,今では,史実的には,マリー・アントワネット王妃の言葉ではなかったとされていますが,言葉の意味自体は,市場に安いパンが無くなってしまったのであれば,当時菓子パンの一種とされたブリオッシュ――水の代わりに牛乳とバターと卵を多く使った――を安価で供給しなさい,というものだそうです。メタボ的にはあまり感心しませんが,こういう勅令であれば,筆者のような甘党は大歓迎です。
マリー・アントワネット王妃にまつわる逸話については,その多くが中傷やデマということらしいですが,同妃や王室に対する悪意とか憎悪といったフィルターを通して物事を見聞きすると,「さもありなん」と,信じてしまうのは人間の事実認識の限界のようです。
「原発廃止論の論拠なるものの多くの部分が放射線への恐怖というセンチメントに発していることの危うさだ。恐怖は何よりも強いセンチメントだろうが、しかしそれに駆られて文明を支える要因の原発を否定してしまうのは軽率を超えて危険な話だ」とは,石原東京都知事の論稿ですが,感情的な反発が一見勇ましい正義感に見え,本人もすこぶるご満悦,「政府はけしからん」的強硬論に自己陶酔してしまうところ,そういうときこそ落ち着いて周りを見直す余裕が必要です。
その,マリー・アントワネット王妃,ギロチン台に引き出されたとき,最期の言葉は、死刑執行人の足を踏んでしまった際に発した「ごめんなさいね、わざとではありませんのよ。でも(あなたの)靴が汚れなくてよかった。」,ということだったそうですが,死に際して,さりげない気遣いができる,高貴でお洒落な,優しいおばちゃんだったのかもしれません。